パワーポリティクスの未来学 Part1

先日の記事、「報道されない二つの新事実 青山繁晴」で少し触れたが、地政学の見地から見ても日本は危機的状況にあるようだ。

2004年に発刊された深田匠著の『日本人が知らない「二つのアメリカ」の世界戦略』によれば、アメリカは、中共は、世界は、有史以来の人類全ての歴史は、ただ一つのパワー・ポリティクスの「原理」に基いて動いているそうだ。

その「原理」に関する説明を読んでみると、著者の主観的見解はさておき、確かに世界の歴史の多くは、その「原理」に当てはまってしまうので、なるほど!とうなずいてしまう。

少々長文だが、是非読んでみてほしい。



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    『日本人が知らない「二つのアメリカ」の世界戦略』 (P542 ~ P550)
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【日本の国家戦略(二)】

パワー・ポリティクスの未来学

米国防総省のA・マーシャルが1999年に作成した「アジア2025」というレポートがある。

このレポートでは「アジアには今後、中国による破局的な非連続的構造変化が、しかも急速にやってくる可能性がある」「中国が近代化に成功して強い国になった場合、中国は彼らのいう戦略国境論を実践に移し、日本に日米安保破棄と中国の属国化(衛星国化)を迫る」「中国が近代化に失敗した場合、経済停滞から二十世紀前半の中国大陸のような状況となり、軍事的冒険主義に走って米露と衝突する」「中国は強国となっても弱体化しても、いずれにしろ米国の競争相手となる」と分析予測している。

さらに同レポートでは2025年における日本の未来として、

①米国との同盟を強化して軍事的・国際政治的に自立した大国となる、
②日米安保を解消して狐立した軍事大国化の道を進む、
③中国の覇権を受容してその事実上の属国と化す、

以上の三パターン以外にありえないとも分析している。


日本の現状を鑑みると②の可能性は最も低く、中共-米国民主党-日本の親中左派が目指す③に対して、我々が採るべき方向性は共和党及び台湾独立派と連携しての①の未来ではないだろうか。

これについては同様にS・ハンチントンも近著『引き裂かれる世界』の中で、日本の近未来は「アメリカとの同盟を強化して中国への対抗勢力形成を進める」「台湾・ペトナム・インドネシアなどを日本グループに入れ、軍事大国となって独自に中国に抵抗する」「中国主導の地域連合に入り従属的地位に置かれる」の三パターン以外は存在しないと断じている。

つまり日本の20年後の近未来は、この三つの可能性以外は絶対に存在しないのだ。そのことをご記憶いただいた上で以降を読み進めて頂きたい。

2004年2月15日の米ワシントン・ポスト紙は「パキスタンの”原爆の父”と呼ばれるカーン博士によるリビアやイラン、北朝鮮などへの核兵器技術拡散の闇ルートは、中国が起点だったことが浮き彫りになった」と報じているが、かつてソ連が日独と英米を衝突させて資本主義国同士の衰退を謀ったごとく、中共は中東と米英の衝突を謀っている。

イスラムとアメリカを対決させることによって、最後に世界覇権を握るのは中共だという戦略である。

そしてその中共の野望の妨げになるもの、それはただ一つ、中共にとってのアジアの宿敵日本が目覚めることだけなのだ。

それをよく理解しているが故に、ブッシュ政権は日本に対し「目を覚ましてくれ」と願い、靖國参拝の申し出まで含めた心からのエールを送っているのである。戦闘行為さえできない自衛隊のイラク派遣にブッシュ政権が大喜びしたのは、この日米団結の絆が一歩確かに前進したからなのだ。

1994年8月20日付の米ウォールストリート・ジャーナル紙(共和党系)は次のような一文を掲載している。

「民主国家日本の有権者が、いつまでも無防備のままでいいと考えているのは誤りだ。日本がどんな自衛策を講じるかによって、今後何十年ものアジア全体の安全保障の形が定まるであろう。(小略)

より恒久的な問題は中国で、中国が日本を戦略上の競争相手とみなすことは不可避だ。日本がいつまでも受け身で傍観すべきではないことは誰もが納得しよう。

他のアジア諸国は、日本の力が中国の野望の抑止力となり得るかどうかを熱心に見守っている。日本が自国の軍事的安全保障を真剣に考えるなら、立派な役割を果たすことができる。

その場合の真の問題は、日本がどのような超大国になるべきかだ。

日本が強大な軍事力を待ちつつ防衛的超大国になるなら、それは日本にとってもアジアにとっても一番いいことであろう。その前に日本は第二次大戦ノイローゼという重荷を下ろすべきだ」。


つまり日本の軍事力増強こそが中共の野望を抑止すること、それをアジア諸国が願い見守っており、そのために日本はまず自虐史観と決別するべきだと分析しているのだ。

まさに然り、同紙が述べるとおり日本が目覚めて中共のアジア制覇の野望を阻面Lするか否かによって、今後何十年ものアジア全体の安全保障は左右される。

これこそがまさに現代の大アジア主義であり、アジア全体に対する日本の責務である。決して外務省の赤い官僚が主張するが如き「中国への謝罪と償い」などがアジア主義ではなく、また日中の連携などという非現実的な幻想も現代のアジア主義ではない。

ハンチントンの『文明の衝突』では、「中華文明・イスラム文明」対「西欧文明」の衝突によって新世紀の世界は拡散した恒常的暴力の時代になるというが、まさにその予測どおりに現実の世界は動いている感がある。

西欧とアジアが敵対するような近未来は、何としても回避しなければならないが、中共の中華文明(大中華覇権主義)とアメリカが代表する西欧文明では対決は不可避となる。

西欧とアジアの掛け橋となることが明治維新以来の日本の使命であり、また世界中でその役割が果たせる国は日本しかないのだ。それは即ち、日本がアメリカの同盟国としてアジアの平和を乱す中朝を倒し、アジア平定を行う使命を意味している。

そして中共政権が崩壊すれば日本はアジアのバランサーとなり、そうなれば世界人口の半数を占めるアジアのリーダーとして日本は、米欧露に対する大きな国際影響力を持つことになる。

欧米白人諸国に対して堂々とアジアの主張を行い、それを通用させるだけの「力」を日本が待ち、再び大東亜共栄の理念を掲げたとき、そのときが真の興亜実現のときとなるであろう。日本がこの使命を果たさずして、興亜すなわちアジアの友好繁栄は決してありえないのだ。

父祖たちの世代が私たちに大東亜戦争という偉大な足跡を遺してくれたように、私たちもまた中共政権打倒という足跡を子供たちに遺してやろうではないか。
 
さて地政学の創始者の一人として高名なオックスフォード大学教授ハルフォード・マッキンダーは、「海洋国家が大陸国家と対峙している場合、その中間に存在する半島部分を大陸国家に支配されてしまえば、その海洋国家は滅亡するしかない」と述べている。

これは紀元前から現在に至る人類の歴史が裏付けている事実でもある。

明治維新以来の日本人は、海洋国家日本が生き残るためには、大陸国家(シナ、ロシア)との間に存在する唯一の半島部分、すなわち朝鮮半島こそが日本国家存続のカギとなることを本能的に理解していた。

古代より朝鮮半島の歴史とは、内紛に外国を巻き込む歴史を延々と繰り返しており、好むか好まざるかに関わらず日本も絶えず巻き込まれ続けてきたのである。

これは海への出口を確保しようとする大陸国家と、大陸への足掛かりにしようとする海洋国家とに挟まれた半島国家の地政学的宿命であり、古今東西の歴史の中で紛争を繰り返してきた地域の多くは大陸から突き出した半島部に位置している。

こうして日本は朝鮮半島をめぐる支配権の対立によって日清・日露の両戦争へと至り、この二つの戦争に日本が勝ったことで日本の独立と主権は守られたのである。

また大東亜戦争においても、ロシアとシナというこの二つの大陸国家はともに共産主義となり、日本を脅やかし続けた。大東亜戦争は大陸から押し寄せる共産主義を阻む防共戦であると同時に、朝鮮半島がシナやソ連ではなく日本の支配下にあったからこそ、日本はあれだけ長くアメリカと互角に戦い続けることができたのである。

まさしく昔も今も日本にとっての生命線は朝鮮半島なのであり、だからこそ当時の日本は朝鮮半島を合併したのであった。また戦後においても、日本に接する南半分の韓国が自由主義陣営に属し、日本と共にアメリカの同盟国であったからこそ、戦後日本の平和は保たれたのだ。現に韓国は、朴政権から全斗煥政権に至るまで「釜山赤旗論」(釜山に赤旗が立てば日本も共産化される)を唱えて、日本に韓国の安保費用負担を要求していたぐらいなのである。

平和ボケしきった現在の日本人は、この朝鮮半島をめぐる地政学的な国際力学をまったく理解しておらず、それは自虐史観が「歴史に学ぶ」ことを否定せしめているからに他ならない。

もし現在の北朝鮮問題をアメリカ主導の下に解決できたとすれば、金正日体制崩壊後も日本にとっての東アジア地政状況は大きく変化しない。

しかし、もし中共主導で金正日体制が核開発中止によって生き残った場合、もしくは中共主導により北朝鮮に代替政権が樹立された場合、北朝鮮は中共への依存を深め、また既に反日はもとより反米親中が大勢となっている韓国も中共の支配圏に入ることは確実である。

つまりかつての日本が日清戦争で戦って守り抜いた朝鮮半島は、再びシナ(中共)の勢力圏下に組み込まれるということである。

韓国軍は現役兵だけでも68万人、それに北朝鮮の120万人を加えると、その総兵力はアメリカを抜き、中共に次ぐ世界第二位になる。

廬武鉉政権が狙う南北連邦国家が成立すれば、世界第二位の兵力と核ミサイルとを保持する「中共の第一の子分」が日本の喉元に刃を突きつけることになるのだ。

すなわち対馬海峡が新しい「38度線」になるということだ。この国際力学の変動が台湾の統一派を有利に導き、もし台湾が中共に統一されてしまえば、それはASEAN諸国全てが雪崩を打って自動的に中共の勢力圏下に組み込まれることを意味する。

つまり東アジアにおいて存在するのは、中共とその勢力圏下の衛星国、そして唯一孤立する日本、そのような状態が出現するということだ。

従って北朝鮮は何としても崩壊させなければならず、小泉首相が「任期内に国交回復を目指す」とか言っているが、国交回復による経済援助などは論外の愚行であり、朝鮮半島全部が中共の勢力圏下に入れば、「アジア2025」レポートの③の未来が確定する。

韓国保守言論界の重鎮である李度珩朝鮮日報元論説委員は、この現状況について「(朝鮮半島は)有史以前から19世紀末まで、あらゆる面で中国すなわち大陸勢力の絶対的な影響力下にあった。

ところが19世紀末から始まった日本の大陸進攻によって、朝鮮半島は海洋勢力のもとで近代化を歩むこととなった。(日本敗戦後も)南半分はアメリカという海洋勢力の影響下に残った。(小略)

しかし現在の韓国は、とくに若い世代の情緒的な反米・親中感情とナショナリズムヘの顕著な傾斜によって合理性を特徴とする海洋勢力に別れを告げ、情緒と非合理性(専制主義等)を特徴とする大陸勢力の影響下に入りつつある。

中国を背景とする共産化した統一韓半島像を思い浮かべるだけでも、日本にとってこうした事態が国家存亡にかかわる脅威であることは容易に想像できるであろう」と述べておられる。

朝鮮半島を中共圏に取られるか否かが、日本の国家存亡を左右する最大のファクターであることを、対中謝罪外交を重ねているような大半の日本の政治家は全く気付いていない。

もしこの中間の半島部分を大陸国家(中共)に支配されるに及び、中共のアジア支配が現実化したその時は、人類の歴史が教えマッキンダーが説いたごとく、海洋国家日本を待ち受ける長期的未来はただ滅亡あるのみである。

現実問題として日本が朝鮮半島を自国の勢力圏下に置けない以上は、日本の未来を左右するものは東アジアとりわけ朝鮮半島が米中いずれの勢力圏下にあるかということであり、それは日本白身が日米同盟を対等な堅固なものにして中朝同盟と対決できるか否かということにも賭かっているのだ。

ところでこの朝鮮半島の位置のみならず、敗戦によって日本で封印されてしまった「先人の知恵」なるものが存在する。例えば日本の敵は常に北の方角からやってくるという歴史上のジンクスがある。

北のロシア(ソ連)、北西のシナ(元、清、中共)、そして北朝鮮も北東に位置している。従って日本では敵に敗れることを「敗北」と言い、「敗南」とか「敗東」と言わないのは、これに由来しているのだ。

また国境の島の防人たる武家を十な出自とする北島姓や西島姓は多いものの、南島姓や東島姓が少ないのも同じ理由であり、日本の東方は海であり南方にも日本を敵視する国は存在しない。

日本の南方には、台湾を筆頭にインドネシア、フィリピン、パラオ、サモア、トンガ、キリバスなど50力国近くの島国が有り、これらの島国は独白の海洋国サミットを形成しており、日本にそのリーダーたるよう強く推している。

外交の基本は「遠交近攻」と言われるが、日本は北方の敵である北京と一切手を切り、南の親日海洋国とASEAN諸国、そして東のアメリカ共和党勢力と固く手を結んで、「北」を常に警戒する構えを維持するべきなのである。

それが「敗北」という語が教える「先人の知恵」なのだ。

さて、そろそろ人類の歴史を動かすパワー・ポリティクスの根本となる「原理」、その核心に入ろう。日本で「敗北」という言葉が使われてきたことは、地政学的な日本の位置を先人が正しく理解していたことを裏付けている。

前出の地政学の大家マッキンダーは「人類の歴史とは、ランドパワー(大陸国家)とシーパワー(海洋国家)による闘争の歴史である」と定義している。

実は前述したカルタゴ(大陸国)とローマ(海洋国)の戦いもこの二つのパワーの衝突だったのである。大陸国家すなわちランドパワーとはその国境の全て又は多くの部分を陸続きの隣国に囲まれている国であり、一方海洋国家すなわちシーパワーとはその国境の全て又は多くを海に囲まれた国を指す。

従って海洋国家日本は純粋なシーパワーであり、またアメリカも北米大人陸上にはあっても領土の周囲の大半が海であるためにシーパワーに分類される。

この海洋国家と大陸国家の文明には特徴的な大きな違いがあり、常に国境を幾つもの隣国と接するストレスから大陸国家は、必然的に対立・嫉妬・闘争・復讐・弾圧・殺戮等からなる「争いの文明」を生み出す。ロシアやシナなんかはその典型である。

平成16年6月号の「諸君」誌で、中共在住の日本人翻訳家の方がこのシナ人の気質について次のように述べておられる。

「中国人とは、お人好しで平和愛好の日本人とは全く違う荒々しい民族である。上昇志向の強烈な、悪く言えば強引強欲で、しかし天才的商才=悪知恵に長けた民族である。その自己主張の激しさには到底我々(日本人)が及ぶところではない。絶対に自分の非は認めないで、逆に徹底的に相手を攻撃する。何千年来、彼らが先祖から受け継いできた生活信条は『水に落ちた犬は叩け』なのである」。

これは大陸文明の特徴を実に適確に言い尽くしている。

一方、それに対して海洋国家は隣国との間を海が隔てるために、日常的に外敵のストレスにさらされることが少なく、そのために調和・寛容・温順・謙譲・自由・柔和等といった「協調の文明」を生み出すのである。

神道に由来する日本の「共生の文明」は、まさに海洋国家の文明を代表するものであり、マグリン教授云うところの「風呂敷包みの文明」の例えの如くあらゆる事象を大きく包み込む文明である。

このように大陸国家と海洋国家では文明の特質が正反対であり、ロシアやシナが国家間の条約や信義を平気で破るのに対し、米国や英国がそういった行動を取ることがほとんどないのも、この文明の差異に由来している。

そして地政学に基づく人類の歴史を鑑みるとき、国家は同じパワーに分類される国と同盟を結んだ時が一番有利であるという不動の結論が導き出される。

例えば大陸国家シナの国共内戦において、海洋国家アメリカと組んだ蒋介石の国民党政権は、大陸国家ソ連と組んだ毛沢東の共産党政権に敗退して台湾という洋上の島に逃れることになるが、同じパワーの国と組んだ毛沢東にその軍配が上がったのは地政学上の当然の結果である。

それでは近現代の日本の場合はどうだろうか。かつての日英同盟は共に海洋国家同士の同盟であり、日本が大国となるために大いに有利に作用した。

日露戦争の際、イギリスは日英同盟に基いてロシア艦隊の通行を阻止するためにスエズ運河を封鎖し、これは結局ロシア艦隊が遠回りして疲弊することで日本海海戦の日本勝利を導いた。日本海海戦時に日本海軍が保有していた主要艦船31隻の内、13隻はイギリスから購入したものである。

そして日英同盟は日本のみならずイギリスの国益保護にも有効に機能した。さらに戦後日本が今日の繁栄を築いたのも、海洋国家アメリカとの同盟がその最大の要因である。外交のイロハと言われる「遠交近攻」は実はこの地政学に基づく発想であり、つまり海洋国家日本が栄えるためには必ず海洋国家と同盟又は友好を結び、同時に大陸国家に対しては警戒を怠らず深入りした関係は絶対禁物ということなのだ。

従って日本が選択するべき同盟は、日米同盟に加うるならば日台同盟や日英同盟などシーパワー同士の同盟以外には絶対に有りえないのだ。

海洋国家イギリスがユーロさえも導入せずにEUに対して極端に消極的なのは、EUがすなわち大陸国家連合、ランドパワー連合であるからだ。欧州の中核を自負する大陸国家フランスと海洋国家イギリスとは、その歴史を鑑みるに決して親密な関係ではなく、「英仏はいつも戦争をしてきた伝統的なライバルだ。戦争しなかったのは、共通の敵と戦うために同盟を結んだ時だけだ」(ド・ゴール)といった具合に実は犬猿の仲である。

第二次大戦でフランスがいとも簡単にドイツに破れた根因は、シーパワーのイギリスと組んでランドパワーのドイツと戦ったからであり、一方イギリスが最終的に勝利したのはシーパワーの米国の参戦によるものだ。

フランスはこの地政学上のミスを教訓として、1963三年にいわゆる「理性的結婚」と称されるエリゼ条約でドイツと手を組み、さらに米英シーパワー同盟に対抗するために、2004年にランドパワー中共と正式に手を組むに至ったのである。

一方イギリスが米国とのシーパワー同盟を強化することも、欧州における仏独ランドパワー同盟に対抗する上で不可欠な地政学上当然の選択であり、米英側に与しての小泉首相のイラク戦争支持も地政学上において正しかったのである。

小泉首相がそれを理解していたとはとても思えないが、結果的にこれは人智を超えた巨大なスケールで人類を動かしてきた「方則」、いねば大自然のダイナミズムに沿った選択であったのだ。

さてランドパワーとシーパワーの中間国家というものも存在している。朝鮮半島やギリシヤのような半島国家もそうであり、ベトナムのように領土の半分がそれぞれ海と陸に面しているのも中間国家に分類される。

前述の如く、こういう国家は両パワーの衝突の舞台となりやすく、紛争の舞台となる宿命にある。従ってベトナム戦争も朝鮮戦争も、地政学上において当然起こるべくして起こった戦争なのである。

そして中間国家はその紛争リスクのデメリットを負うと同時に、どちらのパワーとも同盟を組むことができるというメリットも併せ持っている。

こういう中間国家がどちらの勢力圏に加わるかで両パワーのバランスが変わるのだ。

それ故に例えば、朝鮮半島の大陸側(北)が大陸国家の中ソと組んで共産主義となり、海洋側(南)が海洋国家アメリカと組んでシーパワーの勢力圏下に入り自由主義を選択したことも、地政学的に当然の帰結である。

ベトナムも共産化したのは大陸寄りの北側であり、アメリカと組んだのは海洋寄りの南側だ。このように中間国家が両パワーの紛争の舞台となる場合には、大陸に接する部分と海洋に接する部分が二つに割れて代理戦争を起こすケースが圧倒的に多い。

そしてこの中間国家を同盟に得ることが、両パワーにとって最優先される地政学的戦略となるのだ。
 
ランドパワーのロシアに度々侵略されてきたトルコはシーパワーの海洋国家であり、冷戦下でアメリカはソ連に対する「防共の砦」としてトルコと半島国家ギリシヤにずっと軍事支援を行ってきた。

イスラム教国のトルコが屈指の親米国であり、また同時に親日国でもあるのは、シーパワー同士で相性が良いからなのだ。

トルコとギリシヤは地中海の東の奥にあり、大陸のソ連から見ると黒海から地中海へ抜けるための海の出口をふさぐ形で、両国が向かい合って位置している。

トルコはアメリカとのシーパワー同盟で強化されていて手が出せないため、ソ連は半島国家ギリシヤ国内の共産ゲリラを操って革命を支援したが、この共産ゲリラ軍のクーデターは1949年に米軍の支援でギリシヤ政府軍が鎮圧するに至っている。これによってソ連は地中海方向への侵出を封じ込められることとなった。

このように半島国家、そして両パワーの中間国家が圧倒的に紛争・戦争の舞台となってきたことは、有史以来の人類の歴史が見事に証明しているのだ。

朝鮮半島を除くアジアにおける中間国家として重要な鍵を握っているのはインドである。

インドは北半分か大陸に、南半分が海に面しているため、両パワーの中間的な存在である。従ってインドが海洋国家アメリカか、大陸国家中共か、どちらに与するのかで米中の国際力学は大きく変わる。

インドは地政学上どちらのパワーと組むことも可能であり、それ故に米中両国はインドを自陣営に引き入れるために綱引きを続けているのだ。

ちなみにASEAN諸岡はごく一部を除いて基本的に海洋国家であり、従って日本との相性が良い一方で、中共による覇権を内心非常に嫌い警戒している。

フィリピンやタイが日本に合同軍事演習や自衛隊によるASEAN防衛を求めたことがあるのは、中共のランドパワーに対抗するためのシーパワー同盟を求めたということでもある。

なお台湾本省人と日本の相性が良く、本省人が日台同盟を切望するのもこれと同じ原理に由来する。

さて地政学士においては日本人が決して忘れてはならない二つの方則が存在している。

一つはランドパワーとシーパワーは必ず衝突し対決する運命にあるということ。そしてもうひとつ、もし対決をどちらかが避けた場合は、避けた側が相手国の属国となるしか国家として生き残る道がなくなるという方則である。

日清戦争も日露戦争も、シーパワーとランドパワーの対決であった。米ソ冷戦もそうだ。今回のイラク戦争も、米国のシーパワーとイラクのランドパワーとの対決である。

そしてこのイラク戦争において米国のイラク攻撃を支持した主要国は、日本、英国、イタリア、オーストラリアなど全てシーパワーたる海洋国家(および中間国家)であり、反対したロシア、中共、仏、独は全てランドパワーたる大陸国家である。

賢明なる読者諸氏はもうお分かり頂けたであろう。

世界は全て地政学で動いているのだ。私か本書で述べてきた全ての国際情勢は、地政学に基いての二つのパワーの衝突なのである。

米英と仏独の対立はシーパワーとランドパワーの対立であり、アフリカが中共の勢力圏下に入ったのもランドパワー連合であり、中共が歴史カードを使って日本弱体化戦略を進めるのもランドパワーからシーパワーヘの攻撃である。

中共と台湾本省人の対立も二つのパワーの対立であ、り、オーストラリアのハワード首相が「安保理常任理事国に欠けているのは日本だ」と述べるのもシーパワーからシーパワーヘの援護に他ならない。

大陸国家イラクがランドパワーの仏露中から武器を買って石油利権を与えつつ、一方で常軌を逸した反米主義を取っていたのも、二つのパワーの対立からして自然なことなのだ。

この二つのパワーの攻めぎ合いが人類の歴史、戦争の歴史そのものであり、この地政学を基本とする国際政治がパワー・ポリティクスである。

[次回 Part2 では日本の取るべき国家戦略の核心に迫る]


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