軍事情勢レポート5 第四部 中共海軍の軍事力

『中華人民共和国の野望と日本の未来』と題した、黒井氏による最新レポートの第5弾、第四部です。

レポート第五弾の第一部から第四部までの最終部となります。

是非、拡散願います。



ソース: 戦後レジーム脱却サポーターズ
『中華人民共和国の野望と日本の未来』
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『中華人民共和国の野望と日本の未来』      (軍事研究家 / 黒井執斗)

第四部

次に、人民解放軍海軍の軍備を見てみましょう。

保有する総艦艇数は約800から900隻とされており、その内訳は、空母1隻、潜水艦69隻、駆逐艦27隻、フリゲート艦47隻、ミサイル艇41隻、哨戒艇170隻、機雷掃海艦艇20隻、揚陸艦70隻、揚陸艇150隻、支援艦その他200から300隻、となります。

これらが海岸線に沿って設けられた極めて多数の基地に配備されており、エリアごとに北側から順に、北海艦隊、東海艦隊、南海艦隊の3艦隊構成となります。

平時において九州から沖縄、そして尖閣や台湾の海域を管轄するのは東海艦隊であり、約250隻の艦艇が配備されています。

対して、我が海上自衛隊が保有する総艦艇数は約150隻、その内訳は、護衛艦48隻、潜水艦16隻、機雷掃海艇29隻、輸送艦艇13隻、支援艦その他約40隻、となります。

あまりの物量差に唖然としておられる方も多いかと思いますが、これが現実です。

ただし、絶望する必要はありません。現代戦においては数の力が全てではなく、質が重要となります。

まず全体での排水量総トン数を比較すると、人民解放軍海軍は約900隻で約135万トン、海上自衛隊は約150隻で約47万トンとなります。割り算をすれば、1隻あたりの排水量は海自がはるかに上回ります。

これは海自の保有艦艇が大型化かつ近代化された構成であり、中共側は老朽艦や小型艦艇が多く含まれる為と考察できます。

そしてまず目に付くのは人民解放軍海軍の潜水艦の多さですが、海自は対潜哨戒任務に就く哨戒機78機と哨戒ヘリ86機を保有・運用しています。これは国際的に見ても断トツの数字であり、その練度・能力も間違いなく一級品です。よって制空権がある限り、敵潜水艦の行動は大きく制限される事になります。

逆に、十分な対潜哨戒能力を持たない人民解放軍に対し、海自の潜水艦は抑止力と戦闘力を大いに発揮できるでしょう。

そして全体規模の割に機雷掃海艇が少なく、極めて高い掃海技術を有する海自に対し、レベルはずっと低いと考えるのが妥当でしょう。よって、いざ劣勢となれば機雷群を敷設して一時後退すれば、かなりの時間稼ぎが出来ると考えられます。

制空権の無い状態、つまりエアカバー無しに海軍艦艇が戦うのは敗北と同義ですから、航空戦力についても少しシミュレートしておく必要があります。

人民解放軍空軍は国産レーダーシステムを搭載した早期警戒管制機 (AWACS)としてKJ-2000を運用していますが、その探知能力は約400km。そして現状ではデータリンク能力を持たず、機上管制員による無線音声で味方機に情報を伝えます。

対して空自の運用するAWACSは改修済みのE-767で、探知能力は約800km。軍用電波通信を用いた「リンク16」というデータリンクシステムにより、F-15J(近代化改修済機)と情報をリアルタイムに共有出来ます。

2倍の遠距離を見通せるE-767は、リンク16と合わせて味方機へより早期から迅速に情報を伝えることが出来、より優位な航空展開を取ることが可能です。

そしてこのリンク16はイージス艦を含む新鋭艦や地上レーダーサイトにも装備されており、地上レーダーサイト・AWACS・F-15J・イージス艦等新鋭艦、の全ての情報を相互にリアルタイムで共有し合い、戦いを進める事になります。

極端な例を挙げると、あたご型イージス艦は計96セルのVLS(垂直発射装置)を装備していますが、仮にその中の全てのミサイルを撃ち尽くしたとしても、僚艦が搭載するミサイルや、F-15Jが搭載するミサイルをコントロールして誘導することも出来ます。

つまり、僚艦やF-15Jが次々にピストン輸送でミサイルを運んでくる限り、武器備蓄が尽きるまでイージスはミサイル攻撃を続けることが可能です。

近代化著しい人民解放軍海軍も「中華イージス」と呼ばれる高性能レーダーを装備した防空艦の保有を開始していますが、アメリカの本家イージスシステムの本当の凄さはデータリンクにあり、簡単にコピーできるとは考えにくいでしょう。

そして人民解放軍海軍の特徴として一番注目すべきは、揚陸艦の多さです。

これは建国当初から台湾への軍事侵攻を想定し続けている為で、もし空と海の戦いが劣勢となれば、戦車や兵士を満載した揚陸艦群が海を渡って押し寄せる事になります。

陸自が運用する88式地対艦誘導弾は極めて命中率が高いと評価されており、その射程は約200km。これは車載型の移動式システムですから、海岸線に部隊を展開し、敵艦を迎撃する事になります。

最悪の事態は敵揚陸艦を撃ち漏らし、陸戦兵力の上陸を許す事です。陸自は戦車約700両、装甲車両約1000両、攻撃ヘリ約80機を保有・運用していますが、日本が海洋国家であるのに対し、中共は大陸国家です。陸自の兵器・装備が近代的とは言え、人民解放軍の陸上兵力は約160万、保有する戦車も桁違いの約8500両であり、多少の損耗は致命的とはならず、揚陸艦群のピストン輸送で次々と陸揚げされてはたまりません。

よって日本は何が何でも空と海の戦いを優位に進めなければならず、敵の大規模な本土上陸を許す事は敗北と同義となるでしょう。

今も刻一刻と軍備の近代化・増強を急ピッチで進める人民解放軍。その軍事費は約11兆円と、日本の防衛費4.7兆円の2倍以上であり、毎年1兆円規模で増えています。

そして11兆円という数字は現在の人民解放軍の規模や爆発的な兵器増強速度からすると異常に少ない数字です。よって、実際には公表値の3倍の軍事費が投じられていると推測されています。

中共のGDPは日本を抜いて世界2位に躍り出たとは言え、それほど差があるわけではありませんから、実際の軍事支出はGDP比7%を超える計算になります。共産党による一党独裁支配体制においては軍事費を国民に知らせる義務はありませんから、無限に軍拡を続けられる国家システムだと言えます。

ここまで見てきた数字や検討内容はあくまで現時点におけるものであり、近未来にはパワーバランスが崩れ、軍事的抑止力が低下して侵略を誘発することになります。

それを回避する為には経済を回復させてGDPを増やし、相応の軍備増強を無駄なく行い、パワーバランスを保つ必要があります。その為には多くの国民が国防の現状を知って危機感を持ち、防衛費の増強が必須だと認識する必要があり、アジア地域の平和が危機的状況になりつつある実体を周知する事が重要でしょう。

もう一つ見逃せないのは、国内の敵です。

いざ有事となれば、日本国内に潜入・潜伏している多くの工作員や不法滞在中国人、中国系マフィア組織等が全国で一斉に破壊活動を開始するでしょう。中国人は3代にわたって徹底した反日教育を受けていますから、日本人を殺すことに躊躇はなく、それどころか1人でも多くの日本人を殺すことは当然の責務であり、かつ名誉な事だと考えている事でしょう。

彼らは隠し持っていた拳銃、小銃(ライフル)等で武装し、まず間違いなくRPG(携帯式対戦車ロケット砲)等の強力な火器も国内に持ち込んでいます。

去る4月15日に発生したボストンマラソンテロでは3人が亡くなり、180人以上が負傷しました。

使われた爆弾は圧力鍋を利用した手製のものでしたが、この作り方は2010年からアルカイダ系組織がネット上で配布している「inspire」というWeb雑誌の中の記事で詳しく解説されています。

写真を交えながら実に簡単な英語で書かれており、中学生レベルの英語力があれば十分に理解可能でしょう。全ての材料は容易に入手できるものばかりですし、製作作業も容易で専門知識等は全く必要ありません。日本国内においても作ろうと思えば誰でも作れるものです。

火薬や信管を収納する容器も圧力鍋以外に色々と紹介されており、水道管継ぎ手や消火器、プロパンガスのボンベなど、要はある程度の内部圧力に耐え、限界を超えたときに一気に炸裂すれば威力が増すわけです。

有事のテロや破壊活動には強力な手製爆弾が多数使用される事も覚悟した方がいいでしょう。

彼らの優先ターゲットはインフラであり、原子力発電所・火力発電所・変電所・石油コンビナート・ガスタンク・ダム・水源・空港・湾港等、襲撃やテロ行為が想定される施設は非常に数多くあります。

先の東日本大震災においては福島第一原発が事故を起こし、冷却手段を失った原子炉内に収められた燃料棒被覆管のジルコニウム合金が高温になり、一次冷却水の水蒸気と反応して水素が大量発生、建屋内にたまって水素爆発を起こす事態となりました。

これにより、国家的大惨事たる原発事故を引き起こすには爆撃もミサイルも必要なく、鉄塔の破壊等で外部からの送電経路を遮断し、バックアップ用のディーゼル発電機を壊せばいいだけだと証明されてしまいました。

これらターゲットとなり得る多くのインフラ設備を厳重に警備しなければなりませんが、長大な海岸線での警備・迎撃と合わせて陸上自衛隊の任務となるでしょう。

ただし、とてもではありませんが約15万人の陸自だけでは足りず、約30万人を擁する警察組織も応援にかり出される可能性は大です。

そして警察官配備が手薄になった都市部では、より一層の混乱を引き起こす目的を達する為の、銃器による民間人無差別虐殺が始まります。まさに日本国内は戦場と化すわけです。未だに貧弱なニューナンブ銃が主流装備の警察官では優位を保つことは難しいでしょう。

戦場においては戦いが起こればどちらかが負け、使っていた銃器が残されます。それら持ち主を失った銃器を鹵獲して使うのは常套手段であり、ゲリラ戦ともなれば尚更です。

しかしながら、日本国民の多くは銃器の取り扱いが出来ない為、目の前に拳銃が転がっていても自分を守る事すら出来ません。

これは徴兵制もなく、厳しい銃刀法によって銃器を触ったこともない国民が大部分を占める為ですが、有事下においては日本のアキレス腱となり得ます。現行の銃刀法は元を辿れば、GHQ占領下において「軍国主義を排除する為」と称して施行された「銃砲等所持禁止令」に行き着きます。

戦前においても銃器の所持規制はありましたが、登録制での所持は認められていました。勿論、銃器の厳しい規制によって現代日本の治安が高められている事は事実であり、それはアメリカで頻発する乱射事件等を見ても明らかです。

しかし、銃刀法による所持規制は現行のままでいいとしても、政府はいざという時の為、成人国民の射撃訓練実施を義務化すべきです。とは言っても実現するかどうかは怪しいところであり、今のところは自分の身を守りたければ、個人が海外で射撃訓練を実施する以外にありません。

さて、2007年(平成19年)8月に米太平洋軍司令官が中共軍事当局者と会談した際、中共側は太平洋を東西に分割し、東側をアメリカ、西側を中国が管理することを提案しました。管理とは支配の意味でしょう。

当然ながらアメリカ側は拒否しましたが、中共側は真剣に太平洋に狙いを定めているわけです。

その野望を実現する為には、是が非でも強大な空母戦力を保有する必要があります。空母の存在意義には二通りが考えられ、一つは本土と離れた飛び地や同盟国の防衛、もう一つは他国への侵略行為ですが、中共の目的は間違いなく後者でしょう。

そして2012年(平成24年)9月にはその第一歩とも言える、初の空母「遼寧(りょうねい)」が就役しました。

航空機技術の急速な発展に伴い、それを海上において運用する為の空母が実戦に投入されたのは第二次世界大戦及び大東亜戦争からですが、空母戦力同士の戦いを初めて行ったのは日本とアメリカです。しかし、そこに至るまでには数々の試行錯誤があり、様々な工夫の積み重ねでようやく使い物になったのがそのタイミングであったわけです。

まず、艦載機は陸上の滑走路とは比べものにならない程短い飛行甲板から発艦しなければなりません。

翼が生み出す揚力を稼ぐ為、空母は進路を風上に取って全速力で航行します。これは対気速度を稼ぐ為ですが、多くの場合、空母には30ノット(約55km/h)以上の速力が要求されました。例えば風速10mの気象条件なら、艦の速力30ノットと合わせて約90km/hの対気速度が得られます。

そして、着艦時には航空機後尾の着艦フックを降ろし、飛行甲板後部に張られた3から4本程度の着艦ワイヤー(アレスティングワイヤー)にフックを引っかけ、強引に急制動をかけるという荒技が用いられます。まさに熟練の操縦技術が要求されるわけです。

更にはワイヤーを引っかけ損なった場合には即時に加速して再び空へと戻らなければなりませんから(Touch and go)、ワイヤーを捉えた事が確認出来るまでエンジンのスロットルは開いたままです。

そして、これら発着艦の基本は今も変わりません。

特に着艦はかなり強引な荒技ですから、着艦フックや主脚(滑走輪)にかかる負担は大きく、自ずと機体各部の補強が必要となります。よって艦載機の重量は増加し、陸上基地運用機よりも性能や航続距離が犠牲になります。

大東亜戦争緒戦において無敵を誇った零戦の正式名称は「零式艦上戦闘機」です。この名称が示すように零戦は艦載機でありながら高い性能と2200kmに及ぶ長大な航続距離を誇った為、陸上基地でも運用されました。よって小説や映画の特攻隊離陸シーン等にもよく登場するわけです。

また、自衛隊の兵器でも度々見かける「○○式」という名称は、制式採用された年の下二桁を使います。零戦は皇紀2600年(西暦1940年)に制式採用されたため、この名前が付いています。また、当時の陸軍戦闘機では隼が有名ですが、これは皇紀2601年(西暦1941年)に採用された為、正式名称は一式戦闘機となります。
戦後においては皇紀ではなく西暦の下二桁を使います。

第二次世界大戦ヨーロッパ戦線の終結以降、ドイツ帝国が開発した世界初のジェット戦闘機、メッサーシュミットMe262の技術が戦勝国によって接収され、時代はレシプロプロペラ機からジェット機へと急速に変遷していきます。

これにより航空機の大型化と重量化、超音速化に伴う後退翼化が進み、空母からの発艦はますます難しいものになりました。

対処法として現代でも多く使われるのが、飛行甲板の先端を上方に反らせた、いわゆる「スキージャンプ式」です。勿論効果はありますが万全ではなく、出来るだけ短距離で離陸できるように工夫した艦載機を用いたり、重武装を制限する等の対応も必要です。

そしてスキージャンプ式よりも優れているのが、米空母で採用されているカタパルト式の発艦です。大東亜戦争当時には戦艦大和を含む各国艦船に小型で簡易な火薬式カタパルトが装備されていましたが、アメリカは色々と苦心して挑んでおり、終戦直後に就役した空母「ミッドウェー」は油圧式のカタパルトを装備していました。

当時はまだプロペラ機の時代ですから、通常は滑走発艦です。しかし、無風状態の時にはカタパルト発艦を用いました。

今現在10隻のミニッツ級原子力空母を運用しているアメリカですが、採用されているのは蒸気カタパルトです。勿論、スキージャンプ式のようにシビアな運用機の制限はありません。

C-13-1及びC-13-2カタパルトは駆動全長94m、重量35トンの機体を2.5秒で296km/hまで加速させ、一気に押し出します。射出動作は30秒ごとに可能です。

蒸気カタパルトを最初に開発したのはイギリスですが、現在においては様々な改良が加えられたノウハウの固まりであり、アメリカ以外が作るのは難しく、限られた国が少数のみ保有する他の空母は全て発艦能力に劣るスキージャンプ式です。

唯一の例外はフランスが保有する原子力空母「シャルル・ドゴール」ですが、装備しているのはアメリカ製のC-13-3カタパルトです。

現在着々と建造が進んでいるアメリカの次世代原子力空母「フォード」には、電磁カタパルトが装備される予定です。

遡れば、中共の空母保有への準備は約30年前から始まっていました。

オーストラリアは1949年(昭和24年)にイギリスの空母「マジェスティック」を購入し、「メルボルン」に艦名を変えて保有していました。そのメルボルンが退役した後、1985年(昭和60年)に中共がスクラップ用途で取得しました。

その際に武装や電子機器は撤去されていましたが、BH-3型蒸気カタパルトや航空機エレベータ等の航空機発着艦に関する重要部位は残されたままでした。何故そのような不用意な事になったのかは、当時の豪政府が反米労働党のホーク政府であり、親中派のラッド前首相が外交官であったこと等が影響していたと思われます。

この艦が最終的にスクラップ処理されたのは2002年(平成14年)であり、中共は重要部位を徹底的に調べ尽くしたと考えるのが妥当でしょう。ただし、それは1950年代の古い技術ではあります。

1996年(平成8年)には、ロシアが維持コストを確保出来ない為に除籍した空母「キエフ」(1975年就航)を中共の民間企業が購入し、テーマパークとして活用されました。

また、1995年(平成7年)に韓国民間企業が購入した除籍済み空母「ミンクス」(1978年就航)は、その後中共民間企業の手に渡り、これもテーマパークとして使われています。

これら2隻のロシア空母についても、まずは残された装備や艦の仕組みを調べた後にテーマパークに活用したと推測されます。

現在ロシアが保有する空母は「アドミラル・クズネツォフ」1隻のみですが、その2番艦としてソ連時代に建造が進められたのが「ワリャーグ(ヴァリャーグ)」です。

しかし、1991年(平成3年)のソ連崩壊により、船体は100%、機関が70%完成した状態で建造が中断します。

そしてソ連の大型艦を建造していた黒海造船工場はウクライナの所有となり、ワリャーグが売りに出されます。1998年(平成10年)になってマカオの中国系民間企業が海上カジノに転用するとして購入しますが、その価格はわずか2000万ドルでした。

ロシアとアメリカは、ウクライナに対して空母として再利用できないように処理することを要求。各種機器の撤去及び主機である蒸気タービンエンジンの破壊、ないしは撤去が行われたとされています。

それまでにスクラップやテーマパーク転用用途として購入した退役空母に比べて設計が比較的新しいこと、全長305m、満載排水量67000トンと大型艦であることなどから、国際社会は中共が空母として利用する目的で購入したのではないかとの見方をしますが、中共は「空母としての使用はあり得ない。憶測に基づく勝手な発言は慎むべき」と強くそれを否定します。

しかし、その言は全くの嘘でした。ワリャーグは2002年(平成14年)に大連港に入港しますが、輸入申請書類に不備があったとして中国共産党が没収。後には購入者であるマカオの中国系民間企業は、人民解放軍の退役軍人がオーナーのペーパーカンパニーであったことが発覚します。全ては初めから仕組まれ、企まれていた計画だったのです。

中共は2011年までかかってワリャーグを復元、未完成部分の建造を完了しますが、大きな問題が3つありました。
一つ目は主機、すなわちエンジンです。

これはオリジナルと同等の性能を持つ蒸気タービン機関の製造が中国では不可能であり、諸外国からの協力も得られませんでした。推測では性能の劣る蒸気タービンを積んだ、とする説と、商用船用のディーゼルエンジンを積んだ、とする説があります。

中共が情報を開示しませんから真相は不明ですが、いずれにせよ、速力はオリジナルの30ノットから大きく劣り、20ノット前後ではないかと想定されています。

二つ目の問題は着艦ワイヤーの調達です。
着艦ワイヤーには大きな負荷がかかる為、しなやかさと強靱性の両方が求められ、製造には特殊なノウハウが必要です。

中共はロシアから購入しようと打診しましたが、当然ながらロシアはそれを拒否。入手ルートが見つからず難航していたのですが、何故かそれを突然に装備します。

これも諸説あるのですが、最も可能性の高いのは、スウェーデンの特殊鋼企業に勤務していたウクライナ人を経由して技術を盗んだ、という説だと思われます。

そして三番目の問題は艦載機です。

これは上述のように、着艦フックを装備し、各部を強化した艦上機が必要であり、通常の陸上基地運用機は使えません。中共はロシアが保有・運用するSu-33艦上戦闘機の購入を希望しますが、ロシアはこれを拒否。結局はウクライナが保有していたSu-33の試作機を入手してコピーし、国産機J-15として完成させます。

ソ連崩壊以降の兵器取得にはやたらとウクライナが出てくるのですが、両国は航空機技術に関する協力協定を結んでおり、中共が新たに完成させた大型輸送機Y-20にしても、ソ連系の輸送機に酷似しています。

また、非合法な取引も確認されており、射程3000kmの核弾頭搭載可能な空中発射巡航ミサイルKh-55SMや、戦略爆撃機Tu-95MSも中共の手に渡っています。ロシアとは違い、ウクライナは札束さえ積まれれば協力を惜しまないのでしょう。

こうしてソ連が起工した1985年(昭和60年)から26年間の時を経て完成したワリャーグは遼寧と改名されます。そして、その搭載機器は海外各国からのコピー品オンパレードです。

三次元対空レーダーはロシア製Fregatのコピー、平面フェイズドアレイレーダーはウクライナからの技術コピー、船尾に備え付けられた着艦誘導装置はアメリカが運用するSPN-46のコピー、短距離対空ミサイルはアメリカのRAM21のコピー、CIWS(近接防御火器システム)はアメリカ及び西側が広く採用しているゴールキーパーのコピー、対潜ロケットはロシア海軍からのコピー。

船体はソ連製ですし、艦載機もロシア機コピーですから、まさに全身コピーの固まりであり、そのコピー技術は侮りがたしといったところでしょうか。

最大の注目点だったのは、スキージャンプ式+20ノットの速力ではたして発艦出来るのかどうか、スウェーデン技術コピー品の着艦ワイヤーで無事着艦出来るかでした。

発艦出来ずに失速して海に落ちるだろうとか、着艦ワイヤーが切れて事故を起こすだろうとか、様々な憶測がありました。

しかし、2012年(平成24年)9月に人民軍解放軍海軍に引き渡された遼寧は、同年10月に試験飛行を行い、発艦、着艦共に成功させています。公開された動画を見ても見事にスムーズな動きでした。

また、飛行甲板上の誘導員はロシア式ではなくアメリカ式の動きをしていましたから、お手本としているのは米軍の空母運用だと思われます。

予てより地上に空母の飛行甲板を模した建造物のあることが衛星写真で確認されていましたから、かなりの訓練を積んでいたのでしょう。

ただし、公開された動画や画像を見る限りはミサイル等の兵装は装備していませんし、燃料も必要最小限しか積んでいないかも知れません。

つまり、精一杯軽くした状態の可能性が否定できず、もしそうならば作戦空域は限定されますし、攻撃兵器も搭載できないケースが想定でき、実情は張り子の虎なのかもしれません。

いずれにせよ、中共は念願の空母を執念で手に入れた事になり、様々な技術を会得する為の練習艦、試験艦としては機能するでしょう。また、姿を見せてフィリピンやベトナムに脅しをかける程度には十分です。

そして、中共は国産開発の空母4隻を2020年(平成32年)を目処に建造・運用するとしており、2隻は原子力推進、残る2隻は通常動力推進だとされています。原子力推進は難易度が高いですが、中共は原子力潜水艦を運用していますし、未完に終わったソ連の原子力空母「ウリヤノフスク」の設計図面を入手済みとされており、コピー技術の高さで克服する可能性もあります。

また、アメリカがサイバー攻撃を受けて次世代の電磁カタパルト技術が流出した事案があり、それが中共の手に渡っている確率は高いとされています。もしかすると、蒸気カタパルトを飛び越して一気に電磁カタパルトを装備してくるかも知れません。

上記のことから、遼寧が今すぐ日本の脅威になるとは判断できませんが、近未来に4隻もの空母を追加配備するとすれば、作戦・整備・訓練のローテーションを回しても常時戦力が確保出来、大きな脅威となり得ます。

それに対し、識者の中にも「日本も空母を保有すべき」との意見が散見されます。確かに同一種類の兵器を持てばダイレクトにパワーバランスが保てますし、アジア地域に派遣して牽制する事も可能となります。

ですが、かつての大東亜戦争において帝国海軍は多くの空母を運用していましたが、今はその運用ノウハウは完全に失われています。また現在の海自にはジェット戦闘機の運用能力はありません。

しかし、諸々のことはアメリカに頼ると仮定して、まずは簡単にその見積もりをしてみましょう。中共の軍事侵攻を牽制しうる力にならなければ意味がありませんから、お手本はアメリカの空母打撃群とします。

まず、空母本体が5000億円、艦載機が1機100億円として80機で8000億円、防空艦として随伴するイージス艦が3隻で4500億円、海中を随伴する潜水艦が800億円、随伴補給艦1隻が500億円、総乗員約7000人の人件費が700億円、とすれば計1兆9500億円となります。

そしてローテーションを回して常時戦力を確保する為に最低3セット必要ですから、総計約6兆円の初期費用がかかります。また、建造後の運用費用だけでも毎年1200億円以上はは覚悟すべきでしょう。

現在の防衛費が約4.7兆円、そのうち海自の予算は約1兆円ですから、これはかなり無理があります。

しかしながら戦前の軍拡期においては軍事予算はGDPの30%前後でしたし、史上最大の戦艦大和の建造には当時の国家予算の3%がつぎ込まれ、同型艦である武蔵、信濃(空母に設計変更)と合わせ3隻で国家予算の9%を消費しているわけですから、なりふり構わなければ不可能ではありません。

ただし、そうなると我々は今の生活水準を保つ事は出来ないでしょう。

よって私見としては、近々にアメリカ並みの正規空母を保有する事は得策ではないと判断します。

中共に対してパワーバランスを保つ為の現実的代案としては、やはり潜水艦戦力の増強(40から50隻体制)、開発中の超音速対艦ミサイルASM-3(最大速度マッハ5)の早期配備、ヘリ空母増強による対潜哨戒能力の向上、イージス艦の増強(2隻追加で計8隻体制)、新鋭汎用護衛艦の増強、中国本土を射程に収める長距離超音速巡航ミサイルの新規開発・配備、等になると考えます。

それに加え、アジア太平洋地域の国々と連携し、エリア全体で中共を押さえ込む必要があります。

上記の事すら出来なければ、2020年以降に本格的な侵略を受ける可能性が大いに高まります。

かつてABCD包囲網で経済封鎖され、最後通牒たるハルノートを突きつけられたとき、日本は大きな選択を迫られました。

戦わずして敗北し奴隷となるか、戦って活路を見いだすかの二択です。日本は緒戦の約1年半は優位に戦いを進めましたが、その後は開戦前の予測通り、約30倍の国力を持つアメリカに押されて敗退を続けました。

絶望的な状況下において、たとえ敗北したとしても、いつの日か日本は必ず復活して豊かな国になる。多くの兵士達が、そう信じて尊い命を捧げました。

そして、今私たちが暮らす現代の日本は、彼らが夢見た未来であることを忘れてはなりません。
(2013年5月3日記) ≪レポート5 完≫


軍事情勢レポート5 第一部 中共の野望
http://ochimusya.at.webry.info/201305/article_8.html

軍事情勢レポート5 第二部 韓国の軍事力
http://ochimusya.at.webry.info/201305/article_9.html

軍事情勢レポート5 第三部 中共の侵略の歴史
http://ochimusya.at.webry.info/201306/article_1.html


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Link:

対中包囲網構築への道
http://ochimusya.at.webry.info/201305/article_1.html

軍事情勢レポート4 空軍力~防衛産業~朝鮮半島
http://ochimusya.at.webry.info/201305/article_2.html

軍事情勢レポート3 核の拡散と日本の決断
http://ochimusya.at.webry.info/201303/article_5.html

軍事情勢レポート2 開戦前夜は近し
http://ochimusya.at.webry.info/201302/article_9.html

軍事情勢レポート1 牙を剥く中国と暴走する北朝鮮
http://ochimusya.at.webry.info/201302/article_1.html

世界平和に貢献する日本の核武装
http://ochimusya.at.webry.info/201206/article_13.html

戦争の大義とは何か Part1
http://ochimusya.at.webry.info/201209/article_2.html

戦争の大義とは何か Part2
http://ochimusya.at.webry.info/201209/article_3.html

国防アレルギーは滅亡への道 Part1
http://ochimusya.at.webry.info/201107/article_11.html

国防アレルギーは滅亡への道 Part2
http://ochimusya.at.webry.info/201108/article_1.html

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